FC2ブログ

【遥か地平線の彼方へ】第一章(31)

第一章(31)

「……なにか、寒気がしますわ」
「姫様?」
 ザンクト・ニコラスブルク、バルィクム駅到着の列車から降りたシュタールブルク王女ヘレーネはぶるっと身震いした。
「すみません。コートが薄すぎましたか?」
「そうではなくて……何か、嫌な身震いでしたわ……」
 エリカ給仕長に荷物を持ってもらい、ヘレーネは答える。
「ようこそおいでくださりました、エレーヌ殿下」
「お出迎え感謝しますわ、コンスタンディノス閣下」
 マヴロミハリス外相と握手を終えたヘレーネはすぐに手袋をはめる。
「やはり、寒いですか」
「ニェート・ニ・ナーダ(お気遣いありませんわ)。出来れば大統領の下へ早く送っていただきたいところですが」
「すぐに手配いたします」
 深めに帽子を被り、首をすくめるヘレーネに苦笑した外相は、手早く馬車へ案内する。
「後列の馬車へお願いします」
「……わかりましたわ」
 駅の前には、物々しい警備と複数の馬車が控えていた。それだけでヘレーネは何かを悟ったようだった。
「殿下、こちらです」
 外相は前から二番目の馬車に乗り、ヘレーネは後列の一台である。その中へ、警護の士官らしき者が案内する。
「あら、貴女は……」
「いかがなされましたか?」
 馬車に座乗したヘレーネは、自分の前に座る士官が女性であることに気付く。
「ニチヴォー・ストラーシュナヴァ(いえ、たいしたことではありませんわ)」
「わかりました。わたしはこの度ヘリェン殿下の警護を担当させていただきます、ナヂェージュダ・ウラヂーミラヴナ・アリーソヴァ国防軍少尉補です。何なりとご希望を申し付けください」
 ブラスィヤの政治改革、教育改革は男女の区別なく行われ、公務員や教員、軍人になる際に性別による差別は西欧よりもなくなっていた。そのため、サラやアリーソヴァ少尉補のような存在は当たり前になりつつあった。
 そこに、近代化を急ぐため思い切った改革を行うブラスィヤ政府の意思をヘレーネは感じ、同時に警護に女性を当ててきたブラスィヤ政府の気遣いに感謝した。

 大統領府に到着し、アリーソヴァ少尉補を下がらせると、ヘレーネはマヴロミハリス外相の案内で迎賓の間へ脚を進めた。
「ご機嫌麗しゅう、マドゥモワゼル・エレーヌ」
「……ベルス公。……相変わらずですわね」
「午後が楽しみだ」
「わたくしとしては憂鬱ですわ」
 手を額に当てて大げさに嘆いてみせるヘレーネ。エマニュエルはそれを満足げに眺め、廊下をすれ違った。




遥か地平線の彼方へ 過去ログ
キャラクター紹介
キャラクター紹介2
プロローグ
第一章 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12) (13) (14) (15) (16) (17) (18) (19) (20) (21) (22) (23) (24) (25) (26) (27) (28) (29) (31)

【遥か地平線の彼方へ】第一章(30)

第一章(30)

 一八六八年。零下のブロサール共和国首都ザンクト・ニコラスブルク、大統領執務室。
「閣下。お疲れのようですな」
「……ベルス公。また反乱の報告だ。これで何度目か」
 報告書から目を離し眼鏡を外したのは、ブロサール共和国第三代大統領イヴァン・イリイチ・コルガノフ。机を挟んでソファにくつろぐは、ブロサール国民会議議長エマニュエル・ド・ベルスである。
「ブラスィヤを統治するには鉄の手が必要だ。しかしその手には手袋をはめておく必要がある、とは言うがね」
「公よ。それでは改革の意味がない」
「ただの戯れだ」
 エマニュエルはポケットからマッチを取り出し、葉巻に火をつけた。
「戯れでは済むまい。公までそのようなことを言い出せば、ただでさえ反動化してきているブラスィヤはどうなる」
 議長は紫煙を口に含み、ゆっくりと吐き出す。
 葉巻の甘い香りが執務室に漂った。
「それほど根を詰めなさるな。議員の説得はすでに始めている」
 ――我が国は遅れている。
 先のスィナン、カルヴァート、アクターニュ連合との戦争で痛感した現実を、大統領と議長は噛み締めていた。半世紀前のオルラレン戦争後の青年将校たちの蜂起は貴族社会に潰されたが、敗戦により打ちのめされた今度の改革は着実に実を結び始めていた。
「そういえば、閣下」
 険しい顔から穏やかな顔に戻ったエマニュエルの声は弾んでいた。
「シュタールブルクの姫君はそろそろ到着するのでは?」
「マヴロミハリス外相を向かわせているが……公は面会の予定があったように思うが……」
「引き続き教官を送ってもらわねばならないからな。司法改革はまだ三年目だ」
「アクターニュの手はあまり借りたくない……だが、友好国のプルーセンも社会制度では後進国だ」
「成熟した市民がいないのは、我々とて同じ。民を富ませて教育を施さねば、国民軍は作れない」
 もう二度と、クリミル戦争のような無様な真似は嫌だ。ブラスィヤの首脳らは打ち倒される軍旗を眺めるしかなかった苦い記憶を振り払いたい。
「ともあれ、個人的には若い娘(こ)と久々に話せるのが楽しみだが」
 立法府の長の口から出たとは思えない台詞に、大統領は力なく息を吐く。
「公には養女(むすめ)さんがいるでしょう」
「それはそれ、これはこれ」
「……それだから公は誤解されるんだ」
「問題はないさ。見るのはいいが手は出さん。紳士のたしなみだよ」
「猊国の紳士方に謝ったほうがいいと思うぞ」
 互いに肩の力が抜け、いつの間にか青年将校時代の口調に戻っていた二人であった。





遥か地平線の彼方へ 過去ログ
キャラクター紹介
キャラクター紹介2
プロローグ
第一章 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12) (13) (14) (15) (16) (17) (18) (19) (20) (21) (22) (23) (24) (25) (26) (27) (28) (29)

【遥か地平線の彼方へ】第一章(29)

第一章(29)

「んんっ……と。……本当に、いい天気ね」
 サラは伸びをして、校舎横の芝生に倒れこんだ。
 ミハエルも、サラの隣に倒れこんで、深呼吸をする。
「吸い込まれそうなくらい……青い空」
「……ああ」
 サラの呟きに、ミハエルは小さく答える。
「あの時も……こんな空だった」
「…………」
「ミハエル、ずっとわたしを抱いててくれた。怖がってたけど、どこか安心できた」
 ミハエルは、自分たちがすべてを失ったあの日を思い出す。
 サラを抱きしめる手、恐怖に震える脚。
 近くで瓦礫が軋むたびに、声を上げるサラの口を押さえて、指を噛まれた記憶。
「ミハエルって、本当に、あったかいね。小さい頃とおんなじ」
「サラ……」
 ぎゅ、っと、サラがミハエルの腕をとり、抱きしめる。
「サラ!」
「……ちょっと、こうして……いさせて」
「…………」
「わたし、夢のこともあるけど……ミハエルに会うために今まで頑張ってきたんだよ」
 サラは、ミハエルの肩に顔を埋めて震えている。
「この道進んでたら、きっと、いつか、ミハエルに辿り着くって。ミハエルに追いつけるって」
「追いつくも何も……もうサラは俺なんか追い越してるよ」
「ううん……わたしはまだまだだよ。……ミハエルとか、フォン=ケストナー中将とか……隣に居て安心される人になりたいよ」
「おいおい……俺のこと過大評価してるって」
「ううん……そんなことないよ。だって、ほら……こうしてると、落ち着く」
 ミハエルは、無意識の内に、サラの頭に手を置いた。
「……ん」
 それを感じたのか、サラは口元を緩ませて微笑った。
「ミハエルの周りってね、あったかいの。ミハエルがあったかいから、周りまであったかくなる。あったかいと、居心地いいんだよ」
 肩口に揺れる頭を、そっと撫でる。
「だから、ミハエルの周りって、いい人が集まるんだ。フォン=エッカルトさん、ランツくん、ヒルデさん、ミハエルのクラスメイト……みんな、ミハエルのこと大好きなのね」
「……サラは?」
「え?」
「サラは……俺のこと……」
「…………」
 ミハエルの言葉を、サラは努めて耳に入れないように、黙りこくった。
「憶えてる? わたしを近所の子から庇ってくれたとき、ミハエルが言ってた言葉」
 それからしばらくして、サラは唐突に聞いてきた。
「俺が言ってた言葉?」
「うん。……いつも、近所の子たちを蹴散らして、わたしに言ってくれた言葉」
「うーん……」
 ミハエルはサラの額に置いた手と違う手を、自分のこめかみに当てた。
「……もしかして……憶えてない?」
「あー……なんというか……もう11年になるからなぁ」
 受験とか試験とか、たくさんあったし。
「……ふう……そう上手いこといかないわよね」
「え? 何か言った?」
「ふふっ、……なんでもありませんよーだ」
「なんだよ、いったい」
 ミハエルが問うと、サラは立ち上がって人差し指を自分の口に持ってきた。
「ミハエルが思い出すまで、言わないもん」
「おいおい」
「思い出したら、ご褒美あげる」
「……努力します」
「よろしい」
 ミハエルが答えると、サラは可笑しそうに、ずっとくすくす笑っていた。







遥か地平線の彼方へ 過去ログ
キャラクター紹介
キャラクター紹介2
プロローグ
第一章 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12) (13) (14) (15) (16) (17) (18) (19) (20) (21) (22) (23) (24) (25) (26) (27) (28)

【遥か地平線の彼方へ】第一章(28)

第一章(28)


「あら? ミハエルが図書館に居るなんて珍しいわね」
 図書館の机で云々唸っていたミハエルを、図書館に借りた本を返しにきたサラは見つけた。
「お、サラか。……まぁ、ちょっと課題があってな」
「課題? えっと……『南カルヴァートによる統一戦争で、ファルストールの戦いからデュナサン・ムーの戦いにかけての戦訓を3つ以上見つけなさい』」
 ミハエルの隣に座ったサラが課題を覗き込む。
「うーん……それでわざわざ図書館まで調べに着たんだけど……」
「……確かに、基本問題ね」
「……そんなあっさり言うなよ」
「ランツくんに聞けばわかるんじゃない?」
「ダメだって。ランツに聞いても、『これはミハエルでもわかりますよ』だって」
「あはは……確かに、言いそう」
「うわ……さり気に酷いこと言うな」
 ひとつ年下の、一学年先輩の言い方に撃沈するミハエル。
「……それにしても……これはランツくんが好きそうな問題ね」
「どういうこと?」
「ほら、ちょっと前になるけど、ミハエルの部屋行ってお話したじゃない? あの時よ」
「ごめん。難しい話だと思って聞いてなかった」
「もう! 何してるのよミハエル~! あの時の話聞いてればこの問題一瞬で解けるわよ」
「うう……聞いてなかったことを今更言われても……」
 ミハエルはますます小さくなる。
「もぅ……仕方ないなぁ」
 サラはそんなミハエルを見かねたか、ミハエルのいる机の向かいに座って、広げている資料を指差し始めた。
「まずは……ファルストールの戦い。ここのポイントは騎兵の使い方よ」
「騎兵の使い方?」
「はじめに、槍衾作られているところに騎兵が突撃したでしょ。そのときは撃退された。でも、長弓兵が北カルヴァート軍槍兵隊へ射撃を行って陣形を乱す。ここで騎兵が突撃すれば北カルヴァート軍は敗走……ここまでは大丈夫?」
 ミハエルはこくりと頷く。
「でも、次のフロントバインの戦いでは、南カルヴァート軍が長弓兵を無防備にしたばかりに先に急襲を受けて退いてる」
 サラは丁寧に地図をなぞりながら説明を続ける。
「最後はデュナサン・ムーの戦いね。南カルヴァート軍はまず、戦闘予定地になりそうなこの三日月状の丘を、騎兵が機動力を活かして占拠。そこで騎兵は下馬して歩兵として中央前面に配備。直ちに長弓兵は三日月の内側に杭を打ってバリケードをつくり、北カルヴァート軍を待ったわけ。あとは下馬騎兵が敵軍を拘束しながら、その両面に長弓兵が矢を射かけ続ける。そうすれば北カルヴァート軍は三日月の中央に押し込まれ圧死が発生。後は敗走するだけ」
 スッスッスッ、とサラは地図上で指を走らせる。
 まるで、その指のまま兵が動いているような錯覚さえあるくらい、サラは活き活きと説明した。
「ファルストールの戦いでは、弓兵と騎兵の共闘で、強力な槍兵の守備陣形を崩すことが出来た。次のフロントバインの戦いでは、弓兵を無防備にしたばかりに敗退している。最後のデュナサン・ムーの戦いでは、弓兵と歩騎兵を共闘させた陣形は崩すのは困難だということ。つまり、いくつもの兵科を適材適所で使うと、単純な総和以上の効果が得られるってことなの」
 窺うように、サラはミハエルの顔を覗いた。
「……どこが、『簡単』なんだ……それの」
「え? これって結構単純なんだけど……」
 心底意外そうにサラは驚いた。
「要は、自分の強いところで受ける、っていう基本を忠実に行うってことだもん。自分の強いところに敵の弱いところを当てる。自分の弱いところへは牽制や妨害をやって攻撃させない。騎兵は速射兵器に弱かったり、砲兵は突撃に弱かったり、それぞれに欠点がある諸兵科でも、共闘させれば補えあえる……」

 ――『能動的防御』は、相手を自分の得意分野に追い込むことが容易いのですね。

「ああ……なんとなくわかったような気がする」
 ミハエルは、ランツが課題などでよく言う口癖を思い出す。
「でしょ?」
「そういえば、剣術でもそんな感じだったな。どうやって相手を崩すかとか、隙が多いところ狙うとか」
 ミハエルの中で、昨夜西之上少佐に稽古をつけてもらったことと、ランツの言葉、そして今のサラの指摘がすべて結びついた。
「うーん……そうね、結局実際に戦うのは人間だもんね。個人技でも、応用はいくらでも出来るんじゃない?」
 サラは目を細めてミハエルを見つめた。
「懐かしいね、こんな風に二人で話するのは」
「そう……だな」
 図書館とはいえ、今は砲兵科と工兵科の授業中で、あまり人が居ない。
 これまでサラと会話するといっても、何かにつけローゼが居たり、ランツが居たり、その他クラスメイトが居たりして、じっくり二人きりで話をすることはなかった。
「そういや、あの頃からサラは頭良かったよなぁ」
「そんなことないよ」
「ほら、父さんの農学書を一晩で憶えたり」
「うう……そんな昔のこと出されても」
「昔といえば……よくサラって近所の子にからかわれてたよな」
「もう! 思い出させないでよ~」
「……でも、そんな近所の子達も……あのあと」
「……うん」
 突然攻めてきた、異様に近くに感じる雄叫びが脳裏に浮かぶ。
「……嫌なこと思い出させたかな」
「いいよ……」
 俯いて、サラはか細い声を出す。
「ミハエル……ちょっと、外出よう。ね?」






遥か地平線の彼方へ 過去ログ
キャラクター紹介
キャラクター紹介2
プロローグ
第一章 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12) (13) (14) (15) (16) (17) (18) (19) (20) (21) (22) (23) (24) (25) (26) (27)

【遥か地平線の彼方へ】第一章(27)

第一章(27)


 本日午後の最後の授業は、戦術教官のエーリヒ・フォン=ファーレンハイト少佐による座学だった。
「……と、スィナンの『神の剣』は東ロマーナ交易の拠点である――」
 ――ゴーン、ゴーン、ゴーン。
「っと、もうこんな時間か。今度は多少政治が関わるが、諸君はこの件についてレポートをまとめてくるように。提出はこの間のレポートがあったから……次の週でいい」
 フォン=ファーレンハイト教官が教室を出て行き、再び騒々しくなる教室。
 同時に、顔が真っ青になっている本物語の主人公がいたことは、誰も気付いていなかった。

(しまった、しまった、しまった!)
 教官の「課題」の言葉に、ミハエルは頭を抱えた。
(手なんかつけてるわけねーよ)
 とりあえず紙とペンを抱えて図書館へ向かうため練兵場を横切るミハエル。
「あ、先パ~イ!」
 そんなミハエルの耳に、この青空のように晴れ上がった声が入る。
「ヒルデか」
「何すか、そのやる気のない返事は……」
「いや、課題が残ってるのに、こんないい天気なもんだからな」
「要するに、サボりたいんですね」
「要約しすぎだ」
「で、そんなことを後輩に聞くあたり、切羽詰ってるんすね」
「まぁ、そうなんだが」
「フォン=ケストナー先パイに聞いてみるのは?」
「いや、ランツは自力で解けと言ってくる」
 手直しは手伝いますから形だけでも作っていただかないとご自身のためになりません、というランツの口調を真似て、ミハエルはうな垂れた。
「ははは……確かに、お堅い人っすね」
「多少融通利かせてくれてもいいのになぁ」
「先パイ、それは融通とは違うような……」
「イインダヨー」
「グリューンダヨー」
 お互いに黙り込む先輩後輩。
「ぶっ」
 どちらからともなく噴き出すと、手を振ってまで笑い出した。
「ちょ、今、打ち合わせなしだったぞ」
「っははは……そうっすね!」
「なかなか息もあってたしな」
「何なら、お笑いコンビで売り出しますかね」
『お巡りさん、実は犬がいなくなったのですが……』
『では、張り紙などしたらいかがでしょうか?』
『そう思ったんですが、生憎、家の犬は字が読めないんですよ』
 少し首をひねる二人。
『人間、やっぱり聞きたくない言葉ってありますよね』
『某業界では「体力の限界」だそうで』
『女性は「若いうちが花」だったそうで』
『でもやっぱり一番聞きたくないのが』
『「繰り返す、これは訓練ではない」っすね』
 思ったより滑ってしまい、溜息をつく二人。
「なんだか、俺、すごく後悔したんだが」
「自分もっす……」
「素直に生きていくか、お互いに」
「そうっすね……」
 ――ガシ。
 二人はお互いの肩を叩き合った。
「何、青臭い友情ドラマのワンシーンやってんだ、お前ら」
「わっ!」
「いきなり驚かすなよ、カルル」
 と、クラスのお調子者の方向を向いたミハエルは愕然とした。
「ん? どうした?」
「そ、その資料類は……もしかして……」
「課題用に決まってんじゃん。俺が最終日以前に終わらせると思ってたのか?」
「いいよな、お前は、こういうことに関しちゃ真面目だから。どうせ課題終わってんだろ?」
 ふてくされるカルルに、ミハエルは小さく呟いた。
「……ない」
「え?」
「終わってない……」
「…………」
「…………」
 カルルの目が喜びに満ち溢れる。
「やった! 仲間! 仲間ができたぞ!! 主よ、ありがとうございます!!」
「やめろ! 全身全霊を持って感謝するのをやめろ!」
「ふう……これで無理に課題終わらなさなくても~、怒られるのは俺だけじゃあないな~」
「俺は課題終わらない前提か!」
「前提じゃない」
 何かことを成し遂げたように、カルルはミハエルの肩を持った。
「 終 わ ら す な (はぁと」
「死ね、氏ねじゃなくて死ね」
 胸倉を掴みかかるミハエルの手を華麗にかわし、カルルは舌をちろっと出していたずらっぽく笑いながら練兵場を駆け抜けて行った。
 唖然とするミハエルだったが、そんなことをやっている余裕がないのはわかっているので、頭を切り替えて図書館へ向かう。
「というわけでヒルデ、すまんが課題やってくる」
「わかったっす。先パイ、ガンバっすよ!」
 後輩に見送られ、ミハエルは静かな戦場へ足を伸ばした。






遥か地平線の彼方へ 過去ログ
キャラクター紹介
キャラクター紹介2
プロローグ
第一章 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12) (13) (14) (15) (16) (17) (18) (19) (20) (21) (22) (23) (24) (25) (26)
プロフィール

久間知毅

Author:久間知毅
和歌山の南の方出身/学生時代:電気工学→理論計算機科学/歴史小説書きorシナリオ書き,たまにイラスト担当/ニコニコ動画では語学(ドイツ語等)講座,数学講座やドイツ統一史を連載中/TRPG(クトゥルフ,ARA2E),艦これ

ネタ・講座系マイリスト→こちら
ジャンルわけしたもの→こちら

ニコニコユーザページ:user/509254


SkypeID:hisamatomoki
twitterへはこちら
mixiへはこちら
pixivへはこちら

政治ネタ用別館

連絡先↓
下記メールフォームまたは以下アドレスまで。
hisama_tomoki●yahoo.co.jp
(●→半角@へ変換お願いします)

ニコニコ動画mylist
久間知毅さんの読書メーター
最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
カテゴリー
月別アーカイブ
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

RSSフィード