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【遥か地平線の彼方へ】プロローグ

『遥か地平線の彼方へ』
作 久間知毅

注意:この作品は、元々ゲームの脚本として書かれたものを、半ば無理やり小説化したものなので、かなり台詞が多いです。
……という事情を考慮してお読みください。



プロローグ

 レーダー・シュレーディンガーは舌打ちした。同時に、何度も自問した。
 ――確かに白旗を持たせたか? 陸戦協定に違反したことはなかったか?
「レーダーさん! テルンの奴らが砲撃を再開してきました!」
 彼の傍には、たった今使者に送って帰らぬ人となった男の妻が泣き崩れている。
「覚悟を……決めるほかないか」
 誰に聞こえるでもなく呟いたかと思うと、今度は周囲に聞こえるように彼は声を張り上げる。
「みんな、子供たちを出来るだけ分散させて隠すんだ。動ける大人は……できれば銃を、なければ農具を持ってここへ集合してくれ。……解散!」
 村のあちこちに砲撃による叫喚がこだまする。
 レーダーは泣き崩れる女性の手を持ち呆然と立つ少女と、我が子を納屋に連れて行った。
「いいか、ミハエル。絶対に声を上げるんじゃないぞ」
「……うん」
「サラのこと……頼んだ」
「うん!」
「いい子だ。それでこそ男の子だ」
 そう言って少年の頭をくしゃくしゃと撫でた彼は、腰の拳銃を数回触り、呟いた。
「主よ、どうか彼らをお守りください」
 納屋の扉が閉められ、少年を闇が襲う。
「……ねぇ、ミハエル」
「…………」
「お父さんは? お父さんはどうしたの?」
「黙ってて」
「お母さん、泣いてた……行かなくちゃ」
「サラ、静かに」
「うう……」
 少年は少女を抱きしめ、嵐が過ぎるのをただ待つ。彼には聞こえない。彼には感じない。いたるところで上がる炎、そして断末魔。
 彼は耐えた。少女の耳をひたすらに押さえて。
「きっと助かる。神様がきっとお救いくださる」
 今まで教会以外でまともに祈ったことのない歳だったが、彼なりに必死に福音を心の中で唱える。
 突然現れる暖色の光。
 ――ああ、あれは炎だ。幼い少年でもそれはわかった。その炎が近づく。ああ、これまでだ。彼の世界に音が、匂いが、視界が蘇る。
 少年は託された少女をより強く抱きしめた。それ以外に彼は、少女を助ける術を持ち合わせていなかった。
「連隊長殿! 何も自ら出て行かずとも……」
「いえ、こういうときは最高責任者が出て行くものです」
 カサリ、と身近で音がする。
 少年はゆっくりと、確かめるように視線を上に持っていく。
「……もう大丈夫。僕達はプルーセン陸軍、第三擲弾騎兵連隊。僕は連隊長のヴィルヘルム・フォン=ケストナー。階級は騎兵大佐です」
「プルー……セン……?」
「クリスト殿下への救援です。間もなく、フォン=シェクト大将閣下の本隊が到着するので、それまで君たちを保護させてもらいます」
 少年の混乱を見て取ったこの細目の軍人は、頬をかいて付け加えた。
「そうですね……君たちは助かったわけです」
 このとき、はじめて少年は身体の緊張を解いた。



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No title

最初の1文のシュレディンガーを見て、シュレディンガーの方程式が思い浮かんだのですが、やはりそれが由来となっているのでしょうか?

No title

>やまぶんさん

ドイツ人名であっさり思いついたのがシュレーディンガーだったという話でして^^;
まぁ、作中では架空の地名ですがw

まぁなんとか書き切れればと思います。
プロフィール

久間知毅

Author:久間知毅
和歌山の南の方出身/学生時代:電気工学→理論計算機科学/歴史小説書きorシナリオ書き,たまにイラスト担当/ニコニコ動画では語学(ドイツ語等)講座,数学講座やドイツ統一史を連載中/TRPG(クトゥルフ,ARA2E),艦これ

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