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【遥か地平線の彼方へ】第一章(1)

第一章 (1)

 プルーセン王国とは、欧州中央部――ロルカ――に位置する君主国である。元は神聖ロマーナ帝国辺境の一小国であったが、大王フリードリヒ二世を筆頭とする名君に恵まれたことにより、一八六七年に至っては列強の中に名を連ねていた。
 特に、数年の内に起こった二つの戦争での勝利は、プルーセンの中欧における優位性を内外に示すものであった。ひとつは北方のテルン王国との西ロルカ戦争。もうひとつはロルカ地方の覇権を争った、神聖ロマーナ帝国の後継マイエンタル帝国との譜苑戦争である。
 その軍国プルーセンの根幹をなす、士官教育の場、マリオン王立陸軍士官学校。構内に併設された寮の一室で、今年で十七になる少年、ミハエル・シュレーディンガーは何度も制服のボタンを調整していた。
「これで……よし」
 ミハエルは鏡に映された肩章、そして袖章を眺めて唇の端が上がる。
 予科士官学校に入学してから苦節五年。ようやく本科の制服の着用を許されたのだ。感動もひとしおである。
 彼は夢想した。サーベルを握り締め、多数の騎兵を従えて敵前線に向かう自分の姿を。いつの日か見上げ憧れた、西ロルカおよび譜苑戦争の英雄、『ノースロイゼの槍』ことフォン=ケストナー将軍のように。
 ――と。
「んしょ……んしょ……」
「何だ?」
 鏡に向かって悦に入っていたミハエルであったが、廊下で聞こえる何かを引きずる音に気付く程度には耳が良かったらしい。
 ガタン!
 部屋の扉の前で、明らかに不穏な音がした。さすがにここまで来ると、不干渉を標榜できなくなる。ミハエルは扉に近づき、ゆっくりそれを押してみる。
「開かない、か」
 今度は強く。
「……無理か」
 彼は一歩後ろへ身を引く。そして、
「……せえのっ!」
 バタン!
「みぎゃ!」
 ……何か、今聞こえたような?
 そう思った彼が恐る恐る下を見ると、そこには大きなトランクと10歳くらいの小さな子供が、すっかり目を回して伸びていたのだった。



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久間知毅

Author:久間知毅
和歌山の南の方出身/学生時代:電気工学→理論計算機科学/歴史小説書きorシナリオ書き,たまにイラスト担当/ニコニコ動画では語学(ドイツ語等)講座,数学講座やドイツ統一史を連載中/TRPG(クトゥルフ,ARA2E),艦これ

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