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【遥か地平線の彼方へ】第一章(3)

第一章(3)

「何を仰います? ここは私の部屋でもあるのですよ。ミハエル・シュレーディンガー生徒?」
「へ?」
 まったく当てが外れ、思考停止に襲われる。そんなときだった。
「やっほー、ミハエル、元気してたかにゃ?」
 さようなら、静かな昼下がり。
 嵐よろしく、竜巻よろしく、黒髪をなびかせて颯爽と登場する女性の出現……それを危惧していたミハエルは頭を抱えた。
「姉さん! 部屋に入る時はノックしてくださいと何度……というか、その奇怪な語尾は何ですか」
「いやぁ、新たな可能性を見出そうと……」
「何のです?」
「あたしの魅力の可能性」
「……誰か、お医者様はいませんかー」
「まぁ、そう言うでないにゃ。あたしとミハエルの仲なんだからさ」
「そういう誤解を与えるようなことは控えてください!」
 ミハエルは突然現れた災厄の根源に、声を荒げる。
「あ、あの、こちらの方は……?」
 と、ひとり置いてけぼりを食らった少年は恐る恐る声を上げるが……
「きゃー! 何この子!? 可愛いっ!」
「ひぎゃ」
 暴風に巻き込まれるのは自明であった。
「ああ、抱き心地も最高っ……」
「あの、姉さん……?」
「ミハエルはちょっと待ってて! ああ、お肌もぷにぷにしてるぅ」
「おーい、姉さーん、もしもーし?」
「何よ、今いいところなんだから」
 ミハエルは手を左右にぶんぶん振りながら、頭も振る。
「そういう問題ではないでしょう。……その、窒息しますよ?」
「あ」
「うみゅ~」
 何か形容しがたい鳴き声を上げて、今まで宙に浮いていた少年は倒れこんだ。
「あ、はははは」
「バツを悪くしても無駄ですよ。折角今起きたっていうのに」
「あら、あたしとしたことが」
「開き直らない」
 もはや後の祭りであるが、黒髪の女性はオホホと上品に笑って見せた。他方少年は首を少し振り、意識を回復させながら、ずれた眼鏡を元の位置に戻す。
「ごめんね、ボク? 可愛かったから、つい」
「いえ、少し苦しかったくらいですので……」
「じゃあ、もう一回……」
「姉さん!」
「冗談よ、冗談」
 へらへらと手を振り、その女性は視線を外す。
「で、どうしたの、この子」
 それを今聞こうとしてたんだと、女性と少年の間に割り込んだミハエルだったが、少年の方が女性に対して膝を屈して最敬礼を行っているのに気付く。
「お初にお目にかかります、エッカルト大公女ローゼ殿下。お噂はかねがねお聞きしておりました」
「うーん、知ってたのね」
「シュレーディンガー生徒の義姉殿となれば、自ずと」
 ローゼ殿下と呼ばれたその女性は、抱きついたことをとがめられたときよりもバツが悪そうに頬をかいた。
「クリスト自由公の宝石。欧州一の才媛。絶世の美女……社交界では有名な話です」
「猫かぶりの効の……痛たたた! 姉さん、足踏まないで!」
 一七〇センチを超えた長身からの踏み込みに、ミハエルはベッドの上で泣く羽目になる。
「まぁ、ここは軍だからね。そういう出自を気にしないこと。いいわね?」
「了解しました」
「じゃあ、今度は君の名前聞かせてくれる? あ、あと座っていいわよ」
 義弟の部屋であるというのに、この姉はすっかり主となって場を仕切っていた。
「はい。私はケストナー男爵中将が嫡子、ランツ・フリードリヒ・エドゥアルトです。どうかよろしくお願いします」
 丁寧に頭を下げたランツに、今度はミハエルが驚愕することになるのだが、それはまた別の話。




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久間知毅

Author:久間知毅
和歌山の南の方出身/学生時代:電気工学→理論計算機科学/歴史小説書きorシナリオ書き,たまにイラスト担当/ニコニコ動画では語学(ドイツ語等)講座,数学講座やドイツ統一史を連載中/TRPG(クトゥルフ,ARA2E),艦これ

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