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【遥か地平線の彼方へ】第一章(5)

第一章(5)

「っ……」
「痛むか、ランツ?」
 頭に濡らした布を当て、ランツは木陰でミハエルに手当てを受けていた。
「手加減してやればよかったんだけど……」
「いえ……むしろ私なんかのために本気でやっていただいて嬉しいくらいです」
 ――もともと思いっきり手加減してたんだけどな。
 真摯な瞳で見つめ返してくるあまりの純朴さに、ミハエルは返って後ろめたくなる。木剣とはいえ、頭を打たれればやはりコブくらいはできる。実際、思いっきり振り下ろすような奴はいないので、酷い怪我にいたることはないのだが。
「すまない、校長室はどこかな?」
 スッと木陰に繋がるように影が出来、晴天に映える白い服装が眼に入った。
「あの……どちら様でしょうか?」
 歳は二十代後半。純白の軍服に黄金の肩章。身長はミハエルより十センチほど低い黄色い顔をした男がそこに立っていた。
「これは申し送れたな」
 男は腕を張らない海軍式の敬礼をする。
「オレは大和皇国海軍少佐、西之上翔ってモンだ。駐プルーセン大使館付武官で、校長に着任の挨拶に出向いたってわけだな」
「はぁ」
「まぁ、本来陸軍の知り合いも来る算段だったんだが……ちっと本国の手続きで手間取っててな。それで拝命仕ったのさ」
「理由は諒解いたしました。校長室はこちらであります。……ランツ、ちょっと待っててくれ」
「わかりました」
 俺はランツをその場に残し、西之上少佐を案内することになった。
 晴天が季節の寒さを幾分か和らげる渡り廊下を、二つの足音が並んで歩く。
「うーん……君、曹長だね。本部の」
「あ……はい。士官学校生徒であります。本科一年です」
「すると、あの子はランツ・フォン=ケストナーくんかい?」
「そうであります、少佐殿」
「『殿』はいいって。オレ海軍だし」
「わかりました、少佐」
 そうして、西之上少佐とミハエルは世間話を続けながら校長室への廊下を歩いた。
「つとに聞くが、君はなかなか剣の腕も立ちそうだね」
「え!」
 西之上少佐は唐突に尋ねた。
「え……はい、腕が立つかどうかはわかりませんが、クラスではトップであります。ですが少佐、どこでそれを?」
「いや、君の歩き方とか、手でね。オレも剣は多少やるから」
「そうですか。……あ、つきましたよ少佐」
「ダンケ、……っと、君の名前は?」
「自分ですか? 自分は、ミハエル・シュレーディンガーです」
「ミハエルね……わかった。もし今度機会があれば、君の腕を見せてほしいもんだな」
 そういうと西之上少佐は、ミハエルに敬礼をすると校長室の扉をノックした。




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久間知毅

Author:久間知毅
和歌山の南の方出身/学生時代:電気工学→理論計算機科学/歴史小説書きorシナリオ書き,たまにイラスト担当/ニコニコ動画では語学(ドイツ語等)講座,数学講座やドイツ統一史を連載中/TRPG(クトゥルフ,ARA2E),艦これ

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