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【遥か地平線の彼方へ】第一章(10)

第一章(10)

 ルヴォア家のシュタールブルク王国は、ロルカ南部の有力諸侯のひとつで、昨年できたプルーセン主導の北ロルカ連邦に属さない独立国家である。エッカルト大公国などの一部を除くロルカ諸侯は、譜苑戦争でマイエンタル帝国側についたため、多額の賠償金を払う義務があった。南部諸侯のうち財政基盤が脆弱な国家はプルーセンによる北ロルカ連邦へ加盟せざるを得なかったが、今なお三個軍団を常備するリーメン王国や工業化が進み財政基盤の整っているシュタールブルク王国は、プルーセンとの防衛同盟を条件に、その実質的な併合を免れていた。
 ヘレーネ・シャルロッテはシュタールブルク国王カルル一世の娘で、ミハエルとは某姉の影響で昔から親交があった。両名とも、破天荒なコーツブルク家の面々に苦労してきたのだった。
「殿下がマリオンにいらっしゃるということは……また何かやらかしたんですか、姉さん」
「いえ、今回は珍しくそういうことではありませんわ。少し、外交的なところで」
 なるほど、とミハエルは納得する。
 一方、ヒルデの方は恐縮しきってミハエルの後ろで縮こまっていた。
「それにしても……」
 ヘレーネは一息つく。
「シュトゥルム・ウント・ドランクのころはまだ良かったですのに……愛国心を殊更叫ぶ左派がどの議会でも大勢を占めるようになりますから……」
「ああ……あの演説、聴いていらっしゃったのですか」
「ええ」
 彼女は少し疲れた様子を見せた。
「国家、民族、国益、主義主張、イデオロギー……六十年以上ずっと解決しませんわね」
「オルレアン解放戦争以来、ですか」
 ミハエルは尋ねる。
「そのときを生きていないわたくしたちがどうこう言う問題でもないかもしれませんが……彼と革命の伝播が影響を与えたのは確かですわ」
「革命……」
「先の革命も、ロルカ統一国家の模索が潰えましたし……当時のヴィルヘルム陛下の気持ちはわかりますが」
「当時プルーセン王が皇帝を名乗ったら……」
「確実に列強諸国に宣戦されますわ。……正直に言って、プルーセンは辺境の一国と見てましたから」
 先の戦争を思い出し、ヘレーネは苦い顔をする。
「貴方も、是非冷静な目で物事を見るように。……いえ。是非とも軍人の本懐を忘れることなきよう」
「わかっております。殿下」
「……と、他国のわたくしが言う義理でもありませんが」
 少し自嘲気味に呟くヘレーネだったが、お供の二人に目配せするとサッと後ろを向く。
「では、ここまでにしましょう。……お連れの方が憔悴しきってしまいますわ」
 ミハエルは先ほどから黙り込んでいるヒルデを見て、苦笑いを浮かべるほかなかった。
「ローゼ殿下にはよろしくとお伝え……いえ、『ご自重なさるよう』とお伝えください」
「あー、まぁ、おそらく無駄になると思いますが、伝えておきます」
 頭から花でも咲きそうな勢いで周りを引っ掻き回す、西ロルカのシュトゥルムの姿が二人の目に浮かんだ。





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久間知毅

Author:久間知毅
和歌山の南の方出身/学生時代:電気工学→理論計算機科学/歴史小説書きorシナリオ書き,たまにイラスト担当/ニコニコ動画では語学(ドイツ語等)講座,数学講座やドイツ統一史を連載中/TRPG(クトゥルフ,ARA2E),艦これ

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