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【遥か地平線の彼方へ】第一章(11)

第一章(11)

「ニュースだ、ニュース!」
 その日もクラスの情報屋ことアウグスト・フォン=ツィルヒャーはそう叫びながら教室に駆け込んだ。
「ん、どうした? 猫が屋根に上って降りられなくなって助け出されたとか?」
「ちげぇって! そんな普段の心温まる小話じゃねーって! 留学生だって留学生!」
 そう聞いた面々も、大して驚かず平穏である。今や列強の一国となったブルーセンの軍事学校へ留学など、別段不思議ではないからだ。
「どうせテルンとかブロシャだろ? 別に男がひとり増えたところでムサいことに変わりは……」
「でも、この時期、変わってる」
 カルルのぼやきに答えたのは、友人のベルホルト・フォン=キルヒホフであった。
「ふふふふ」
「気持ち悪いな、アウグスト」
 丸刈り頭で不気味な笑い声を上げるクラスメイトに、ミハエルは率直に感想を述べる。
「酷いぞ、ミハエルぅ……だが、これを聞けば俺にひれ伏すこと請け合いだぜ」
「いいから、早く言え。じゃないと聞いてやらんぞ」
 もったいぶるアウグストの扱いに慣れた面々は、適当にあしらいつつも話を進める。
「実はな……」
「おはようございます、皆さん」
 珍しく他の面子よりも遅れたランツが教室に入ってきた。
「お、ランツ! ちょうどいいところに! 実はな……」
「皆さん、フォン=ファーレンハイト教官からの伝言なのですが、ブロサール軍女性士官の留学の件で所用があるので本日のミーティングは行わないそうで……」
「「「女性士官!?」」」
 ランツが言い終わる前に飢えた野獣の群れはある単語に食いついた。
「え、ええ。歩兵本科の二年へ、一年間の留学としてブロサール軍の女性騎兵士官が来校しましたが……」
「おいお前ら! 見に行くぞ!」
「あ、抜け駆けすんなカルル!」
「ちょ、俺を置いてくな!」
 一瞬で閑古鳥が鳴きそうな状態になる教室。
「あ……」
 教室に残ったのは、呆れてものが言えないヴィンツェンツ、ハワード、ベルホルト。完全に気圧されたランツ。
 そして、言うことがなくなって砂になっていたアウグストだけであった。

「こうして来たはいいんだけど……女性で軍人ってことは、ものすんごいゴリラの可能性があるんじゃ……?」
 クラスメイトのひとりが至極もっともなことを指摘した。
「うぐ……それじゃ困るな……俺はてっきり姫様クラスを想像したんだけど」
 カルルが妙に引きつった顔をする。
「ふふふふ」
「のわっ!」
 いつの間にか追いついたアウグストが、再び妙な笑い声を上げている。
「だから、その顔はどうにかしたほうが……」
「俺は見た!」
 ミハエルの指摘を無視して、坊主頭は演説を始めるかのようにこぶしを作った。
「背はこれくらい! 赤いサラサラとした髪! そしてなんとも可愛らしいその顔!」
「おお!」
「ローゼ殿下が女神だとしたら、あれは天使だ! 間違いない!」
 煽りに煽ったアウグストだったが、再び気付いた頃そこには誰もいなかったのは言うまでもない。




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久間知毅

Author:久間知毅
和歌山の南の方出身/学生時代:電気工学→理論計算機科学/歴史小説書きorシナリオ書き,たまにイラスト担当/ニコニコ動画では語学(ドイツ語等)講座,数学講座やドイツ統一史を連載中/TRPG(クトゥルフ,ARA2E),艦これ

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