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【遥か地平線の彼方へ】第一章(12)

第一章(12)

 しかしながら、男は皆考えることが同じだったようで。
「くそっ、見えねぇ!」
 ……すっかり人だかりが出来ており、その先を見ることが出来なかったのだ。
「顔見たいなぁ……なぁ、ミハエル」
 カルルが皆の気持ちを代弁する。
「俺もさっきチラッとしか見てないからなぁ」
「うー……俺にもその幸せよこせ」
 皆好き勝手なことを言い合っていたが、授業開始時刻が刻々と近づき、黒山が徐々に崩れていくと、ようやく件の留学生を見る機会が訪れた。
「おおっ!」
 机に積まれた教本の前で、ローゼと談笑する少女。それが例の留学生のようだ。
 肩までに切りそろえられた赤髪。小柄な体躯に円らな瞳。
 ブロサール国防軍制式の濃い青色コート、赤ズボンに身を包み、堅い軍服から見られる柔肌が余りにもアンバランスで逆に似合っている。
「これは……」
「ああ、正真正銘の美少女だ」
 すっかり見ほれる面々があまりにも奇異だったのか、教室内の数名は気付いたようだった。
 ……そう、もっともうるさい人物も含めて。
「おろ? そこにいるのはミハエルじゃない?」
「……ミハエル?」
 少女はそう呟くと、今度は男たちに笑顔で手を振ってきた。
「おお! 手を振ってるぞ!」
「あれは俺にだ」
「いや、オレだ」
「違うって、ほら! 俺にだって!」
「いやいや! 俺たちにだって!」
 少女の行動に、男たちは色めき立つ。
 と、ここまでならよかったのだが。
「ミハエル! 会いたかった!!」
 ――バサ。
 ……状況を説明せよ、と頭の中で警鐘を鳴らす。ミハエルの五感は、教室から出てきた『彼女』は、こともあろうに自分の名前を呼びながら、かつ自分に抱擁をしたということを告げていた。
「あ、あの、一体」
 とても嬉しそうに自分の顔を見上げる少女に、周囲からの突き刺されそうな視線を感じながらミハエルは問いかけた。
「十年ぶりね、ミハエル!」
「え……十年……?」
 ミハエルは、自身が七歳あたりのころを思い出す。
「あの頃はフォン=ケストナー閣下の紹介で孤児院で……って! あ!!」
 目を見開いたミハエルは、自分に腕を絡めた少女の名前を叫ぶ。
「サラ!!」
「うん! ……ちゃんと憶えててくれたんだ」
「え? ちょっと待って……なんでまたサラが『留学生』なんだ?」
「あ……詳しいことはまた今度。そろそろ授業はじまるよ」
 と、ミハエルの胸から離れる幼馴染の少女。
「ね?」
 走ってでも戻らないと間に合わないかもしれない時間で、ミハエルは少女に背を向ける。
「じゃあ詳しいことはあとで聞くから!」
 今起こったことをまったく理解できない中、ミハエルはただ授業に間に合うように走るほかなかった。




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久間知毅

Author:久間知毅
和歌山の南の方出身/学生時代:電気工学→理論計算機科学/歴史小説書きorシナリオ書き,たまにイラスト担当/ニコニコ動画では語学(ドイツ語等)講座,数学講座やドイツ統一史を連載中/TRPG(クトゥルフ,ARA2E),艦これ

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