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【遥か地平線の彼方へ】第一章(17)

第一章(17)

「お、ランツ、今帰りか?」
「ええ。調べものも終わりましたので」
 日が傾く前に寮に戻ってきたミハエルは、図書館帰りのランツと肩を並べて部屋へ向かう。
 そしていつもと同じようにその扉に手をかけ、開く。
 ……開く。
 ……そう、開いたのだ。
「何……これ?」
「…………」
 別段部屋がどうこうなっているわけではなく、特にどうということはないようであるが……一箇所どうこうなっている場所がある。
 ――なぜ、窓が割れている?
「空き巣かっ!?」
「……いえ……そういうわけでは……ないよう……で……す」
 妙に歯切れ悪いランツは、顔を引きつらせてある一点を見つめている。
「ランツ? どうした?」
「……なぜこんなところにいらっしゃるのですか!」
 ランツは、これまで聞いたことのないような大声で叫んだ。
「……ん……あ」
 その視線の先には、俺のベッドで丸まっている、ランツと同い年くらいの少年が一人、すやすやと寝息を立てている。
「……おお、ランツか。待っておったぞ」
 やたらと尊大な喋り方の少年は、伸びをするとランツに微笑みかけた。
「週末にはご拝謁すると何度も言っているではないですか! 御付の者はどうなされたのです!?」
「あいつらは煩くて敵わん。おお、きちんと追手はまいてきたぞい」
「そういう問題ではありませんっ!!!」
「ランツは余と会いたくないと申すか?」
「そんなことはありませんが……」
 ランツがたじたじになっている。普段から、ともすれば自分よりしっかりしているのではないだろうかと思うランツがこのようになっていることに、ミハエルは新鮮なものを感じた。
「おお、お主がランツの同室者のミハエル・シュレーディンガーか。話はランツから聞いておるぞ」
「は、はぁ」
 いきなり話を振られて、全く事情が飲み込めないミハエルは生返事しか返せなかった。
「あ、あの……どちら様でしょう……?」
「おお、そういえば余はまだ名乗っていなかったな。余は……」
「ああ~! ダメです!!! いくらミハエルでもダメです!!!」
 ランツは、今まで見たことないほどの狼狽振りでその少年を制止した。
「何事じゃ、ランツ?」
「そうだ。どうしてダメなんだ?」
「いえ……諸問題が……ああ! これ以上ややこしくしないでください……」
 ランツは完全に動転して、天を仰いでいる。
「仕方がないのう……余はルドルフという者だ。ランツとは幼い頃からよく遊んで追った仲じゃよ」
「はぁ」
 ルドルフと名乗った少年は、ベッドに乗ったまま、ミハエルをすっかり見下していった。
 ふぅ、とランツは溜息をこぼす。
 ロルカ人名では一般的な「ルドルフ」を、どうしてランツは隠そうとしたのか。
「ランツの部屋がここだと聞いてのう。入ろうと思うたのだが鍵がかかっていてな。仕方ないから窓から入ったのだ」
「仕方ないからって入らないでください……」
 妙に悲痛な叫びでランツは嘆息した。
「窓……どうするんだ?」
 割れているし、直すのにも報告が面倒だ、とミハエルは思った。
「心配はいらぬ。すべて余がなんとかする」
「それは……もちろん責任とって貰いますよ」
「ランツは相変わらずじゃのう」
「……はぁ」
 小生意気な来訪者は、しばし歓談をしてから、再び「窓から」出て帰った。
 しばらくランツの気が立っていたのはいうまでもなく。
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久間知毅

Author:久間知毅
和歌山の南の方出身/学生時代:電気工学→理論計算機科学/歴史小説書きorシナリオ書き,たまにイラスト担当/ニコニコ動画では語学(ドイツ語等)講座,数学講座やドイツ統一史を連載中/TRPG(クトゥルフ,ARA2E),艦これ

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