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【遥か地平線の彼方へ】第一章(18)

←第17話

第一章(18)

「で、任せて大丈夫だったのか?」
「ええ……あの方なら大丈夫なんですが……はぁ」
 ルドルフが帰った後、ランツに確認を取ると、ランツは盛大に嘆息した。
「あいつがどういう人かってのは、話せないんだよな?」
「はい」
「まぁ、ランツの対応を見る限り、さぞ、やんごとなきお方だろうこと見当付くけどな」
「大体はそういうことでいいです」
「で、そんな人が『任せろ』というからには任せていいと?」
 ミハエルはランツに確認を取る。その問いに、ランツは苦笑いしながら首を縦に振った。
「へぇ……そうかい。……まぁ、ランツは男爵家のご子息だからなぁ。そういう交友関係もお有りでしょうて」
 エッカルト大公家の交友関係から、多くのロルカ貴族と面識はあるが、さすがにミハエルもマイエンタルを含めた貴族全員を把握しているわけではない。
 さしずめ、ケストナー家領近辺の伯爵とか侯爵とかの嫡男、といったところかな。ミハエルはひとり納得した。
「何を言っているんですか。ミハエルこそ、意外な知り合いを持っているそうじゃありませんか?」
「意外な知り合い?」
 なんだろう、とふと考える。……でも、それに該当するような人は……
「ほら、今日来た留学生の方ですよ」
「ああ。確かに、幼馴染だよ」
「…………」
 ランツの質問の意図をつかめたミハエルは、問に肯定した。……のだが、ランツはそれっきり押し黙ったままだ。
「……ランツ?」
「う、噂なのですが……ミハエルが、その留学生の方と会った途端に熱い抱擁を交わして……」
「ら、ランツ?」
 見ると、ランツは耳まで真っ赤にしてどもってしまっている。
「せ、せ、接吻まで交わした……と……聞いたんです……が」
「は?」
 ミハエルはランツの言いたいことが再びわからなくなった。接吻って、確か、キスのことだよな、と自問してみても実感がない。
「情熱的なのはわかりますが……そういうことは人前でやらないほうがいいかと……」
「え……いやいやいや! 俺はだな……」
「軍の士官としての振る舞いをですね……」
「だ、か、ら! 俺はそういうことやってないって!」
「へ?」
 ミハエルがはっきり否定すると、ランツは目が点になってその場で固まった。
「そ……そうですよね! あはは、私としたことが、こんなことでうろたえてしまうなんて……」
 ランツは、真っ赤になまま顔を引きつらせて、さらには声が完全に上ずっていた。
「何か? ランツ。もしかして羨ましいのか?」
 いつも自信たっぷりで、歳不相応なくらいしっかりしているランツの、こんなあわてた様子を見てしまうと、ものすごくからかいたくなってくる。
 少しだけ姉さんの気持ちがわかったような、と思うミハエルであったが、すぐに「そんなことはない」と心の中で訂正する。
「そ、そんなことないですよ」
「そうかそうか。なら今度サラを紹介してやるから、な」
「そういう問題ではありませんっ!」
 ぷい、とランツは俺に背を向ける。
 その様子に、つい姉の気持ちがわかりそうになるミハエル。
「っていうか、今の言葉からして……ランツってサラのこと知ってるのか?」
「……私とて貴族の端くれ。ド・ベルス公爵のご息女がブラスィヤ陸軍士官学校をわずか十五で首席卒業したことくらいは耳にしています」
「そんなに有名なんだ」
「女の方で士官学校を卒業できるということだけでも十分有名になります。しかも首席です」
 ランツは少し間をおいて、もう一度口を開く。
「私が知る限り、匹敵するのはローゼ殿下……あとは現カルヴァート女王陛下くらいなものです」
「姉さんも?」
 思いがけず身近な人の名前が挙がり、動揺するミハエルだったが、なぜか納得してしまう。
「まぁ……確かにすごいと思うけどさ。身内のことだけに実感が……」
 学内演習と呼ばれる実地訓練で、史上初本科一年での最優秀賞なんてものを間近に見てしまった記憶が蘇る。
「兵たちの人気も高いようですし、決断力もあります。殿下の参謀は仕事がやりやすいでしょう」
「……いや、別の意味でやりにくいかも」
 主に姉の性格面の問題で、とミハエルは付け足す。
「それは褒めてくれてるのかにゃ~?」
「どわぁ!」
 いきなり背後に声を感じたミハエルは、急いで飛びのいた。
「もう……いつもいつも、もうちょっと優しい反応はできないものかにゃ~?」
「気配消して立たないでください!」
「うわ、酷い反応だにゃ~」
「……っていうか、いつの間に入ってきたんですか」
「今にゃ」
 ローゼは部屋のドアを指してにやりと笑った。今ということは、さっきの「姉さんが指揮官として優れてる」とか「サラを紹介してやろうか」とかの話は聞いてないということになる。
「…………」
「……無視はいくないよ~」
「……ランツ、で、明日の授業だけど……」
「フォローなしかよ」
「あの? いいんですか?」
 ランツがオロオロしている。
「どうぞどうぞ、いつものことだから」
「うわーん! ミハエルがいぢめる~!」
「ひぎゃ!」
 嘘泣きでランツへ抱きつきに行く姉を、ミハエルは生暖かく見送る。
 例によって窒息しそうなあたりでローゼを引き剥がし、渋る様子に説教しながらミハエルは溜息をついた。
「あ、そうだそうだ。もうちょっとしたらサラが来るんだったわ。何だかの手続きで時間かかってるけど」
 ローゼは不意に手を叩きながら、思い出したように言う。
「そっか……」
「ランツくんにも紹介できるしね」
「本当にいい子よ、サラちゃんは!」
「……姉さん、今日あったばっかりじゃないですか」
「いい子はその場でわかるのよ。ランツくんだって会った瞬間わかったもの」
「いや、会った瞬間もなにも、そのときすでにスイッチが入ってたような……」

――コンコン。






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久間知毅

Author:久間知毅
和歌山の南の方出身/学生時代:電気工学→理論計算機科学/歴史小説書きorシナリオ書き,たまにイラスト担当/ニコニコ動画では語学(ドイツ語等)講座,数学講座やドイツ統一史を連載中/TRPG(クトゥルフ,ARA2E),艦これ

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