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【遥か地平線の彼方へ】第一章(32)

第一章(32)


 無事ブロサールとの調印が済み、ヘレーネは晩餐会に出席していた。
 小皿に少々の前菜を取った彼女は、中央から少し引いたところにあるテーブルで、ブラスィヤ要人との会話という名の交渉を繰り広げていた。
 それも一段落する頃、ようやく落ち着いてメインテーブルへ脚を向かわせるヘレーネ。
「……いつも思いますが、なんでも黄金を使えばいいということでもないのですけど」
 あえてカレスティア語でぼそりと部屋の様子を愚痴る。
「花の都にもあるでは? ドニャ・エレーナ」
「…………」
 あえて振り向かず、ヘレーネは無視した。
「ほっほっほっ。ではご一緒にいかがですかな」
 ベルス公爵エマニュエルはグラスを目の辺りまで上げてウィンクする。
「わたくしごときと公では釣り合いませんわ」
「紳士と淑女。いい構図ではないかい。プリンセス・エレーヌ?」
「わたくしはあくまでロルカ人ですわ、ヘルツォーク・フォン・ベルツ?」
 男女の役割分担などはアクターニュの価値観だと言わんばかりに、ヘレーネはロルカ語で答える。
「ほっほっほっ。高貴なプリンツェズィン、さながら芳しいローゼのようですな」
「薔薇を冠するに相応しい姫君は他にいらっしゃいますわ」
 言語を目まぐるしくスイッチする少女と紳士の周りに、いつの間にか人が集まっている。
「おっと、プリヴェート! ナージャ・ウラヂーミラヴナ! いかがお過ごしか」
 その中にアリーソヴァ少尉補の姿を見るや、エマニュエルはヘレーネに背中を向けないように彼女のそばへ歩み寄った。
「わ、わたしはヘリェン殿下の警備を……」
「残念だ、残念だ。愛しいサーラはすでに遥か地平線の彼方へ。ナージャ、君だけが残った」
「え、え!?」
「さぁ飲もう、今宵は懐が痛まない」
 エマニュエルはアリーソヴァ少尉補の手を取り、ヘレーネを振り返る。
 と。
「……あれ?」
 そこにはヘレーネの姿は見つからなかった。
「ああ、愛らしいエレーヌ! 両手に花は咲かぬかこの世は儚く」

 大げさな声を遠巻きにしながら、ヘレーネは壁際へ逃れていた。
「……殊更馬鹿を演じるということは、それほどまずい状況ということですわ」
 彼女は、今度は誰にも聞こえないように小さく呟いた。


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久間知毅

Author:久間知毅
和歌山の南の方出身/学生時代:電気工学→理論計算機科学/歴史小説書きorシナリオ書き,たまにイラスト担当/ニコニコ動画では語学(ドイツ語等)講座,数学講座やドイツ統一史を連載中/TRPG(クトゥルフ,ARA2E),艦これ

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